いま一度、「階級意識とは何か」を読もうと

johanne2004-06-11

本の山をひっくり返したが見つからず。たぶん、誰かに貸して戻ってきていないのだ。三一新書版「階級意識とは何か」*1久野収訳で刊行されて以降、再販はされていないはずなので模索舎になければ入手はかなり困難だ。当の三一書房労働争議でガタガタだし。なのでこのあとの解説はうろ覚えによるのであまりつっこままいように。

W・ライヒは僕が敬愛するマッド・コミュニストです。といっても最初からマッドだったわけではなく、この「階級意識とは何か」などはナチスの分析や共産党批判などにおいて感涙モノの著書です。アメリカ亡命後、一転して反共主義者となりますが、思うに彼が常々訴えていた「性的抑圧からの解放」にとっては、ナチズムもコミュニズムも同じ穴の狢というか、人間の多様性を認めない強権と暴力でしかなかったと結論づけたのでしょう。

アメリカでのライヒは、人間の性的エネルギー「オルゴン」の研究に没頭し、オルゴンエネルギーを取り出して空中に放射し、天候をコントロールできる「クラウド・バスター」を開発します。いい感じです。これらの奇矯な研究の記録は、ドゥシャン=マカヴィエフ監督*2の映画「WR・オルガニズムの神秘」に描かれています。

この変人の数奇な人生と主張に、僕はすっかりハマってしまいました。初単行本には「青年の性的闘争」*3という著作のタイトルを拝借し、「キックアウト・ラヴァース」*4という短編集では「パーフェクト・レインボウ」のタイトルで、クラウド・バスター制作を目論む変人と少年少女の交流を描きました。その後も、「オルゴン・ボックス」*5という短編集も出しました。

ここまでライヒにこだわったのは、彼が世間一般には典型的な「トンデモさん」と理解されるのに対し、初めて読んだ彼の著書「階級意識とは何か」にある、ファシズムの高揚と左翼勢力の退廃を指摘した分析の鋭さ、労働者向け学習パンフレットとして書かれた平易さ、「ゼクス・ポール運動」と名付けられた性解放運動の面白さといった、極めてマトモで誠実な姿勢とが、支離滅裂でありながらある意味一貫しているところに注目したからです。

皆さん騙されたと思って、神田の古本屋で「階級意識とは何か」を探してみては如何でしょうか。