昨日の補足。

北朝鮮経済問題について、リクエストがあったので補足を。

「今の北朝鮮経済制裁は無意味」というのは、人道的見地とか、体制に関する問題とかではなく、極めて単純な事です。報道で皆さんもご承知の通り、この10〜20年の北朝鮮経済は破綻しているどころか、ある種のアナーキーに達しています。もはや、工作機械を鉄屑にして売り飛ばすしかない有様。

経済制裁」が有効なのは、対象国がある程度の生産力や国際競争力を保持している限りにおいてであり、かつての南アフリカと言ったケース、「世界経済」に組み込まれている国家についてだけです。一方で、ミャンマービルマ)軍事政権のような、民主主義が未成熟で、世界経済から孤立した独裁政権にあっては、いくら経済制裁を発動しても、民衆が餓死するだけで、開き直った独裁政権への痛撃とはなりません。端から破綻している国家経済にとって、輸出入の制限なんて現在の延長に過ぎないってことです。皮肉なことに北朝鮮では「人道支援」の食料が横流しされることによってヤミ市場でのコメの価格が下がり、そのおかげで民衆の糊口がしのげるという事実を石丸次郎さんが指摘しています。「経済制裁カード」を切った先の展望がないのなら、残された手段はファン・ジャンヨプが指摘するような「情報戦」しかないのでは?

「外務省がいつになく必死な理由」ですが、外務官僚としては、日朝交渉や6カ国協議が継続されることで「北東アジアの軍事的緊張」を先送りしているのです。鼻息の荒い再軍備派や排外主義者に流された「軍事緊張」が起きても、現状でアメリカは手一杯でアテにならないばかりか、中国の出方次第では日本は否応なく孤立するおそれがあると言うこと。まぁ、それも含めて、日朝問題は金正日政権の頭越しで、中南海にネゴを仕掛けていくべきだと思うのですが。北朝鮮官僚の中南海詣でが最近頻繁に起きていることは、この問題の黒幕が奴らだという証左でしょう。「靖国参拝」に拘っている場合では、全くないのです。