ひでぇ現実・2

夜の来訪者は、凹む僕をさらに凹ませる事実を告げる。

西新宿のバベルの塔で開かれた「東京都青少年協議会・起草委員会*1」。青少年健全育成条例改定に向けた答申案の議論は紛糾したが、結論は極めて厳しいものとなった。

「包括指定」の導入は、恐らく最初から「当て馬」だった。「小委員会による緊急指定」導入について、前田雅英は確か前回、「これはあくまで、刃物等の規制を念頭に置いたもので、不健全図書対策に力点を置いたものではなく云々」と言及していたと記憶している。では、原案に書かれていることは?ヤッパのヤの字も書かれちゃいない。こんな虚言が、なぜ公的な会議で飛び出すのか。「罰則付きのビニール梱包義務化」の項では、いつの間にかその範囲は「(不健全)指定図書」や「(成年マーク)表示図書」を飛び越え、主語のない「不健全図書」に拡大している。その事実を指摘された雑協からの出席者は顔面蒼白になり、足早に去っていった。この意味が分かりますか?

ボーイズラブだろうが少女マンガだろうが、ホラーマンガ、ヤンキーマンガ、格闘マンガ、レディコミetc...エロマンガじゃなくてもお上が「不健全」だと判断したマンガは、立ち読みすらできなくなる。そもそもビニールをかける行為は書店側の「自主規制」でしかない。いっさい話し合われることなく、「自主規制」は「公的規制」にすり替えられてしまった。多くの委員は激しく抵抗したそうだ。それもすべて、またもや「この場では埒があかないので、どうか部会長のワタシに一任を…」という加藤諦三の欺瞞に飲み込まれた。

どうだ。これが現実だ。「エロマンガが規制されるだけでしょ?関係ないよ」とうそぶいていた諸君、喜べ。諸君の大好きな石原都知事によって、諸君の大好きなマンガは消えていくだろう。

すべて徒労か?

そんなことはないはずだ。多くの委員は、是々非々の態度の中で抵抗してくれた。全てが竹花某が仕組んだ茶番だと、誰の目にも明らかな場所で、自らの良心を示そうとしてくれた。脆弱な戦術と言うべきではない。僕らの世界は、そこまでしても守りきれるかどうかわからない。それでも、しぶとく、しつこく、最後の最後に悪法を骨抜きにする方法を探るべきなのだ。



暮れのLPOで、憔悴した宮台真司さんから教わった。



「大きな転換点が来ている。それも、悪い方向への。
イラクに派遣された自衛隊員は屠られる。それは狼煙となり、
声のでかい、勇ましい連中は疲れ切った憲法に最後の一撃を
加えようと動くだろう。
すべて反対!という戦いは、この大きな流れに押しつぶされる。
順々に繰り出される枷の一つ一つを丁寧に弛めていくしかない。
そうしなければ、確実に負ける。」
大意はそういうことだ。僕は、そういうメッセージと理解した。



まだだよ。乾坤一擲。