やみくもにパンクモードに突入するまもなく38歳。

johanne2004-07-01

およそ「この醜くも美しい世界」などと感傷を詠むことすら拒絶したくなるグロテスクな光景が、家から歩いて2〜3分の場所にある。

JR高円寺と阿佐谷の両駅を繋ぐ高架下は近隣住民の貴重な生活道路だ。最近、JR東日本がこの通路を閉鎖し、駐車場にしようとしているそうだ。数年前に吉祥寺〜西荻窪間が封鎖され、この両駅にかつてあった「何か」が確実に切断されたと感じたのも記憶に新しい。中央線の竜脈を断ち切ることで何の呪縛を解こうというのか?そんなことをしてまで世田谷になりたいか?田園調布や成城になりたいか?生憎だが、多摩川縁の成金シティですら、巣鴨大和郷にはなれないのだ。

登録画像は、高架下の阿佐谷よりに位置する、ちょっとした「トマソン」として知られる空間だった。多少間の抜けた高架橋を支えるこの角石のそばでは、四畳半パンクスが不器用な愛を語らい、こじれた会話を必死で繋ぎ止めるふしぎちゃんの彼氏が陣取り、高校生がスケボの練習にいそしんでいた。ぼくはこのトマソンをいたく気に入り、何度か作品の舞台として選んでいる。隙間、避難所、溜まり場、広場。それらは青年や持たざる者にとって不可欠な空間であり、腐敗した権力者や小役人、「普通の人々」と名乗る卑怯者がもっとも忌み嫌う場所だ。

この角石に、気がつくと年老いたホームレスが横たわっていた。夏の日差しや雨水をしのぐには格好の場所ではある。しかし、中央線は寄せ場や食料庫、集住地からは相当に不便な場所である。彼がそこに身を寄せたことには相応の理由があると想像するに難くない。

いつもビニール袋にくるまって寝ているか、文庫本を読み耽っていた老人はさぞかし、市民生活の安寧を脅かしたんだろうさ。ある日通りがかると、角石は通行止めのコーンと針金と分厚い鉄板と高圧的な張り紙でデコレーションされたおぞましいオブジェに変貌していた。

僕は寧ろ、この異様な執着心を感じさせるデコレーションを施したJR職員の精神状態を憂慮する。慇懃に路上喫煙を取り締まるイエロージャケットの老人。赤いベレーのコスプレ自警団。徒党を組んで威厳を保とうとする「おやじ日本」?有害図書狩りに熱中するご婦人。「日の丸・君が代」を拒否して処分された教師を庇ったPTA会長を吊し上げる「政治的に中庸で善良な市民」。
殺人自動車を平然と売りつける大企業、もはや何をすべきかさえ判断不能に陥る徴税機関。街は野犬のマーキングで埋め尽くされ、不安と恐怖は隷属を美徳に変える。

子供が殺人を犯すのが異常事態だというなら、この優美な空間を封鎖したバリケードの正当性を強弁して見せよ。言論の責任とはそういうことだ。粋で鯔背な風流人も、客観的で妥当な正論も、熱狂と暴力の前でははっきり、無力だ。諦観と虚無を受け入れることだけは断じてない。脱力などしている場合か。地下鉄構内の柱のおが屑を、新宿駅西口地下歩道の座れない椅子もどきも、仕切りのついたベンチも、うんざりだ。お前らのやり口はいつもそうだ。切り裂き、突破し、見たくなかったものを見せてやる。

荒れ野に叫ぶ声を聞いた。聞いてしまったからには、もう、前進するしかないのだ。スクラップアンドビルド。デストローイ!