トムのドリームに浸れない。「ラスト・サムライ」

カミさんと2人で「ラスト・サムライ」借りてきて観ました。「ハリウッドが作ったにしては日本の描写がよく描けている」と聞いていたのですが……淡い期待をした方が間違っていました。メル・ギブソンの「パッション」とまったく同じ感想。思い入れが強すぎるんです。トム・クルーズの「脳内武士道」に吐き気がしてしまう。メルギブも「脳内キリスト」を中途半端に「聖書との整合性」にこだわって捏造した結果、凡庸なスプラッタ映画を作ってしまった。典型は最後の武将・勝元が隠れ家にしている里山の風景。誰がどう見てもその里山は日本じゃなくてニュージーランド。どっかで見たことのある風景だな…と思っていたら、アレですよ。「ものみの塔」の冊子に入っている天国のイメージイラスト。さすがサイエントロジスト。渡辺謙小雪といった日本人俳優の懸命の演技が台無しです。見せ場は戦闘シーンだけ、というのもいかにもハリウッド。「動物化するポストモダン」は何もオタクだけじゃなくて、ハリウッドもそのうちボリウッド化するんでしょう。わかりやすい映画ばかりじゃ堪えられません。

西南戦争をモチーフにしている「ラスト・サムライ」ですが、元ネタはおそらく、箱館戦争榎本武揚の脱走軍についていったフランス軍将校・ブリュネでしょう。幕軍ではなく薩摩、フランス人ではなくアメリカ人、というのがいかにもハリウッド。

まぁ、いいです。機会があれば、ボクが「ザ・リアル・ラスト・サムライ」を描きましょう。何と言っても、「蝦夷共和国」は歴史上、アジアに初めて誕生した「共和政府」なのですから。