「萌えバブル」に感じる不安

johanne2005-10-25

秋葉原が「メイドバブル」に席巻されて、2年も経っていないだろう。老舗の「Cafe Mai:lish*1」を初めて訪れたのが確か、2002年の夏頃。パステルピンクの内装や学食みたいなメニュー、メイドコスプレ店員の小芝居に通底するある種の「安っぽさ」が、ヲタク男子のデイドリームである「毎日が文化祭」にハマったのだろうと、当時は理解した。

その理解は好意的すぎたかも知れない。正確には「毎日が文化祭」ではなく「毎日が文化祭前夜の仕込み」だった筈で、チープな模擬店が夢空間たり得るのは、裏方として関与したという事実があってこそだったのではないか。その後、雨後の竹の子のように出現したメイド喫茶のほぼ全てが、Cafe Mai:lishのさらに劣化コピーのような体裁であるにもかかわらず、お客は恍惚としてそのサービスを受容している。福岡でメイド喫茶風営法違反で上げられたらしい*2が、それほど頓珍漢でもないと思う。あの安っぽさはヘルスやキャバクラの内装そのものだし、経営者はかなりの比率で歌舞伎町あたりから流れてきた風俗業者だろうと推察できる。「性的行為ナシの新型風俗」を、アキバ系諸氏が待望していたのだろうか?それともこれからまさに「バブル」がはじけて、健全な淘汰が始まるのだろうか? いや、ないな。「毎日が文化祭前夜の仕込み」を夢見る人間はもう、「ヲタク」にカテゴライズされなくなる。圧倒的多数のヲタクは与えられた空間と差し出されたメニューを貪ることで多幸感を味わえるようになったということだ。



そんな諦観に耽っていたら、後頭部を鈍器で殴打されるような事態が。



今週届けられた「ヤングマガジン」には、ミスヤンマガ初の「メガネっ娘アイドル」グラビアが載っていた。資料名目でエロDVDを漁りに訪れたビデオショップの店頭には、メガネっ娘ジャケの新作AVが随所で平積み、面出しで置かれている。なんたルチア。眞鍋かをりメガネっ娘画像騒ぎから1年かそこらで、まさかの「メガネっ娘バブル」まで始まったのか。

かつて「メガネっ娘萌えの普遍化」を目指して啓蒙活動に狂奔してきた男にとって、この唐突なバブルは悲観的な推論にしかつながらない。このまま行けば、「メイド喫茶」や「電車男」と十把一絡げに「萌えバブル」として消費され、打ち捨てられるだろう。「普遍化」どころか、しょぼい「ブーム」で片づけられるかも知れない。予兆はあったのだろう。ノリと勢いだけで始めたメガネっ娘イベントは想定外の熱狂に迎えられる事態となり、そこに群がる人々の中には「ゼニの臭い」を嗅ぎつけてくる山師もいれば、露出や評価を期待して強引に前に出たがる連中もいた。好事家が身内で楽しめるバカイベントに徹することが出来なくなった時点で、休止という選択をせざるを得なくなった。

消費されることを傍観するのも選択肢ではある。しかし、本質を捉えず、ある種のプロパガンダに誘導するような主張や、ブームに便乗した安っぽいビジネスに自分のささやかな想いが蹂躙されるのは堪えがたい。「毎日が文化祭前夜の仕込み」という妄想にこだわる一介のヲタクとしては、「萌えバブル」にささやかな抵抗を試みたいとも思う。とりあえず、半笑いで、面白いことを、自分に出来る範囲内で再開してみよう。