キジも鳴かずば撃たれまい。

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……ってな格言を思い出すたびに、伝説?のパンクバンド「えび」のPVがフラッシュバック。15年前より、確実にこの国の人間は寡黙になりつつある。饒舌なのはデマゴギーネット弁慶ばかりか。

「アンチ☆共謀罪ガールズ」という方々に頼まれて、マンガ入りのフライヤーを作りました。とりあえず、21日午後2時からJR中野駅周辺で配布されるそうです。昨日強行採決されなかったおかげで日の目を見そう。

「奈良県」の謎。

まず、id:kitano氏による「奈良県少年補導条例」に関連する以下の記述を読んで欲しい。

http://d.hatena.ne.jp/kitano/20060330
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050430
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050429
いくら何でも、こんな条例がすんなり通ってしまう奈良県民の見識を激しく疑うのだが、関西の政治風土に多少詳しい知人がこともなげに言い放った。

「だって、奈良県でしょ? あそこは共産党ですら『保守』みたいな土地柄だから。」

むやみに歴史の長い土地には、植民地生まれの僕には理解できない「何か」が堆積しているとでも言うのか? 最近では小林「薫の秘話」、騒音ラッパーおばちゃんと逸材を排出したが、10年ほど前にも、女子中学生を殺して遺棄した犯人が早々と特定されていたにもかかわらず、逮捕するのに一悶着した事件があった。いずれも、「都市化」と「因習」のボーダーで起きた軋轢が原因のような気がしてならない。ただ、その仮説は日本中あらゆる田舎に符合するものだから、とりわけ奈良が荒廃し殺伐としているという根拠にはならない。

「子どもを守れ」というマジックワードが暴走した結果、上位の法令を著しく逸脱した「条例」を奈良県民はただ、受け入れるだけなのか? 一昔前ならよくあったよな、「憲法違反」の民事訴訟とか。どうでしょうか、奈良県在住の方々は。

「巨大利権」と「プチ利権」。

「治安回復」と「子どもの安全」ってのは、防犯パトロールだなんだで、退職警官の再就職と大手警備業者のビジネスチャンスになったわけだが。そろそろやってくる「有害サイト規制」や「青少年健全育成基本法」なんてのも、「自主規制団体」やら「監視団体」という名目の警察官僚の天下りシステムを整備しようと懸命。パチンコのCRシステム導入では天下り先が経営破綻するなんて失敗もありましたがねぇ。

警察ばかり非難しててもサヨの屁理屈と嘲笑されそう。実際、警察官僚ってのはオイシイ利権話からは縁遠いらしいし。最近は「税金の無駄遣いを斬る!」みたいな特集で、地方のハコ物とか公務員のお手当なんかをマスコミ様が偉そうに攻撃してますが、そーゆー「利権」ってのは、わりかしオイシイ立場の関係者が官民問わず「ある程度」いるのも事実。北海道のド田舎の歓楽街なんて、役場と土建屋のオッサンが経費で落としてくれなきゃもう、大惨事ですよ。

「巨大な利権」は「必要悪」かも知れない。でも、貧乏人の鼻につくのは、そういう大きなカネの循環にすら貢献しない「プチ利権」だったりするわけで。

例えば、いつの間にか「電話加入権利金」(1985年当時で72,800円だった、確か)をNTTが廃止するとか、払い込んだお金はビタ一文返ってこないとか。これは「詐欺」ではないのか? 電話加入権は質草になったし、それ専門のマル某とかいうサラ金だってあったのに。「武富士」「アイフル」と比べても、どっちが悪党か?

郵政民営化」でも不可解な事がある。数年前、グループを設立した際に、郵便物の送付先として「私書箱」を使おうとしたことがある。ところが、新宿をはじめとして、本局級の郵便局の私書箱は完全に塞がっているのだ。



Y「私書箱を利用するには、どうしたらよいのですか?」

この極めて単純で明確な質問に、いずれの郵便局の「担当者」も不可解な返答を繰り返す。

〒「空きが出た時点で、新規に募集します。」

Y「それはどのように告知されて、応募すればよいのですか?」

〒「局内に掲示されます。応募者多数の場合は抽選します。」

Y「広報手段は掲示だけですか?では応募を予約しますので、空きが出た時点でご連絡下さい。」

〒「それはできません。予約が殺到してしまいます。」

Y「では、新規に私書箱を増設するような機会で結構ですから。」

〒「増設の予定はありません。通常、私書箱を利用される方の審査などもありまして…」

Y「どのような条件ですか?」

〒「可能な限り、数日に一回は郵便物を確認に来局されるとか…」

Y「局留め扱いと同じですね。もしかして、利用料がお高いとか…?」

〒「いいえ、使用料は一切かかりません。サービスですから。」



おおよそ、こんな問答を行く先々で繰り返すうちに、ある仮説に辿り着いた。

  • 私書箱を利用する『権利』そのものが売買、あるいは投機の対象になっている。」
  • 「しかも、郵便局はそれを黙認する以外に対処法がない。あくまで『サービス』だから。」

詳細を知っている人がいたら教えて欲しいのだが。民営化したら、有料化…ってオチ?

ケータイの良番号取得も札束が行き交う時代。思いついて、商売にした奴の勝ちだ。しかし。

「キレイゴト」は言語明瞭、意味不明瞭(故・大平総理テイスト)

従来こうした「ニッチビジネス」はいわゆる「その筋の方々」の領分だったような気がする。今でも多分、かなりのスキマはアニキ衆が一応、押さえているだろう。前述の私書箱なんか、前島密の時代から続く伝統だったり。

「巨大利権」の構造改革は国家経済の存亡を賭けているかも知れないが、正直、僕には「プチ利権」の争奪戦で、わりかし呑気でいられたこの国の市民社会の秩序と均衡、モラルや自由が致命的に崩壊するスペクタクルの方が切迫して見える。



例えばの話。ご立派な「生活安全」「健全育成」条例は、こんな人間をどのように救済してくれるだろう?

バツイチヤンママの連れ子はヒモで無職の義父に虐待されつつ思春期を迎え、同級生の彼女を孕ませた挙げ句に殴打を加え堕胎させ年少送り。ようやく決まった就職先はマルチ商法。上司の罵倒で始まる朝から年金生活者の電話リストで営業トーク。ようやく拾ったカモのアパートに8時間居座って150万円のローンを組ませる。一時はセールスも上向いて、元カノと運命的に再会して出来ちゃった結婚。コツコツ貯めた預金を注ぎ込んで35年ローンで買ったマンションは耐震偽装。ほうほうの体で公団に引っ越した翌日に会社が強制捜査。失業と同時に逮捕拘留23日。起訴猶予で自宅に戻ると、カミさんは不在、赤ん坊はうつぶせ寝の状態で息をしていない。救急車で搬送され、緊急手術で一命は取りとめる。ようやく駆けつけたカミさんの首筋にはキスマーク。長い長い沈黙の先に、差し出された離婚届。待合室で始まったバカップルの修羅場を遮るように、医師が子どもの深刻な後遺障害の可能性を告げる。妻は子どもの引き取りを拒否して逐電。それから6年。父子家庭で我が子の回復を願い、いくばくかの成長を確信した男の許に届いたのは、我が子の普通学級への修学拒否を告げる封書。

男は冷静に、我が子を絞殺し、持てる限りの凶器を身にまとい、校門を乗り越えた。無垢な子羊らの鮮血と、彼が生涯背負った血債の価値を問いただすために。その問いかけ自体が誤りだと、彼が一番よくわかっている。



ワイドショーや週刊誌で描かれる「犯人像」「背景と過去」なんてのをテキトーにつなぎ合わせてみただけだが、まぁ、多分似たような理不尽はそこいらに転がっているんだ。北芝健だのロバート・K・レスラーだの小田晋だのなら、もっとキャッチーに、パンピーの妄想にフィットするアナライズを披瀝してくれるだろう。しかも、だ。この手の悲惨な事件なんて、昔に遡るほどに左上がりのグラフになるのは明白だ。

過去と比較できないほど、この国は半世紀ばかり、自堕落だが泰平な、無責任だが前向きな夢と希望を享受できた極めて「特殊な」時代を過ごしてきた。それは不幸なことか? 他国の戦争に巻き込まれない代償として超大国に隷属し、無謀な戦争の加害者責任を愛想笑いと札束で曖昧にやり過ごした戦後の指導者や官僚は相当にやり手だったと思うぞ。今どき「国家の品格」なんぞ語るエセインテリより、屈辱と後悔を呑み込んで「下品でしたたかな敗戦国」を演じた古狸の方がカッコイイと思うし、本気で革命しようとしていた昔のサヨクも、細々と間違っていたけれど、やるべきことはそれなりに果たしていた。彼らは心底、敗戦という紛れもない現実と、変革が必要な不確かな未来と向き合っていたと思う。


「耳障りの言い言葉」「高邁な理念」「単純明快な主張」「自己犠牲」「健全」「情緒」「伝統」「普通」………とりあえず、イマドキ威勢のいいスローガンはほぼ全て、疑ってかかることにする。